愛の嵐

(The Night Porter)

原題=IL PORTIERE DI NOTTE
監督=リリアーナ・カヴァーニ
音楽=ダニエレ・パリス
出演=シャーロット・ランプリング ダーク・ボガード フィリップ・ルロワ

  1957年ウィーン、オペラの指揮者夫妻がホテルに到着した。フロントの男(ダーク・
  ボガード)はその夫人(シャーロット・ランプリング)を見て愕然とする。
  かつてナチスの将校だったころ、収容所で性の慰みものにして弄んだ少女だったのだ。

  ナチスによって囚われの身となったルチアは、死を待つばかりの収容所の惨めな暮らし
  のなかで、親衛隊の将校であったマックスによって目をつけられた。マックスはルチア
  をセックスの慰みものにする一方で、次第にその肉体のなかに溺れていき、絶対の権力
  者であったマックスとただ奪われるのみであったルチアのあいだに、微妙な倒錯した心
  理が芽生えていく。
  
  戦後、オペラの指揮者と結婚し、欧州での興行に同行するルチアは、ホテルのフロント
  として過去を隠しながら勤務しているマックスと再会する。
  マックスはナチの残党狩りを生き延びるために過去を暴く証拠となる書類、写真、人物
  を抹殺すべく、昔の仲間と連絡を取り合っていた。彼らにとって生きた証人は何よりも
  危険だった。女の存在を知った彼らは、マックスに処分することを強く迫る。
  が、彼は拒否する。密告を怖れていたはずのマックスと過去の憎しみだけを孕んできた
  はずのルチアのあいだに、記憶の底に澱んでいた肉体の愛情がよみがえり、二人はいつ
  しかお互いを求め合っていく。もはや救いがたい愛の虜となったふたりは破滅に向かっ
  て突っ走るしかなかったのだ。
  追い詰められたある晩、ふたりの「古き良き」時代、マックスは親衛隊の将校の制服、
  ルチアはマックスにプレゼントされたモスリンのワンピースをまとい、二人ゆえの愛の
  姿を凍結しょうとするかのように、夜明けの人気のない橋の上、歩くふたりの背に向け
  ピストルが発射される。

  当時としては過激な性描写と、女性の監督の描いた愛のかたちということで話題になり
  ました。理性では割り切れない愛というものを突き詰めて描いていると思います。
  作中ではヨナカーンの首を欲した、サロメとルチアをオーバーラップさせるシーンも出
  てきたり、愛の持つ不可解な部分を描こうと言う意図が見え隠れするような気が・・。
  ラストの撃たれるシーンは、やはり心に残りますよね。
      

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