ヴァレンチノ

Valentino

監督=ケン・ラッセル
制作=アーウィン・ウィンクラー
撮影=ピーター・サシツキー
音楽=スタンリー・ブラック
出演=ルドルフ・ヌレエフ  レスリー・キャロン
      キャロル・ケイン  シーモア・カッセル ミシェル・フィリップス 
(1977年作品)ワーナー・ホームビデオ NJV-99435

  

  ヴァレンチノの棺がホールに運ばれて来るところからこの映画は始まる。表では死に顔をひと
  目見ようと狂乱する群衆たち。すると男ばかりがひしめきあうストローハットの群が画面一杯
  になる。女の数はわずかである。ヴァレンチノの顔には薄くピンクの化粧が施してあった。
  そして物語は・・・・・かつて、彼と関係のあった女たちがヴァレンチノとの追憶を回想する。

  ここはダンサー十人が居並ぶダンスホール。その中にヴァレンチノの姿がある。女たちは我先
  に彼と踊りたくて先を争う。そうヴァレンチノはジゴロであった。
  やがて、ジゴロ(今でいうジゴロとはまた別の意味・ 第一次大戦と第二次大戦の間のこの時代、戦争に負けた
  ドイツでは戻ってきた軍人が仕事もなく当時隆盛を極めていたダンスホールで一時間何マルクでご婦人の相手をし
  て踊ったそうです。ドイツではこれをジゴロといいました)
を嫌いダンサーになるヴァレンチノ、ここで
  もアルゼンチンタンゴで一躍スターに・・・彼のニジンスキー(アンソニー・ドウエル(現ロ
  イヤルバレエ芸術監督)がヴァレンチノにタンゴの手ほどきを受ける。
  この男二人のダンスシーンはエレガント!本当に美しい。燕尾服で踊る二人に当時煩悩炸裂し
  た私(爆笑)。ダンディズムに倒錯の香り・・・美しいシーンは今も目に焼き付いています。
  最近話題になった「ブエノスアイレス」よりも遙か二十年前にすでに煩悩を刺激する映像が
  あったのです(笑)(ブエノスアイレスよりゴージャスなカンジがなんとも・・)

  このヴァレンチノを演じるは、世界的なバレエダンサー「ルドルフ・ヌレエフ」(くしくもエ
  イズで亡くなられてしまいましたが)その彼が、タンゴを踊り、ワルツのステップを踏む。
  見てるだけで垂涎ものでした。

  ヴァレンチノの魅力に目を付けたナジモバ映画の舞台美術家ナータシャ(ナターシャはナジモ
  バとレズ関係)彼女は自分の飾りモノとして無理矢理、彼と結婚。ヴァレンチノの映画企画そ
  の他、全てをナターシャは握る。こんな状況にガマンできず彼はナターシャと離婚する。
  その後ドイツからポーラ・ネグリーがハリウッドに迎えられるが、このポーラもヴァレンチノ
  にぞっこん。
  そして、このポーラを追い求めるのがチャップリン(笑)しかしそれを振り切って直ぐさまポ
  ーラはヴァレンチノに結婚を申し込むのだが、その矢先1926年8月23日、三十一才という若
  さで死亡してしまう。生涯通して女に弄ばれるヴァレンチノ。
  その上、新聞記者からパンジー(男色)とからかわれたり、道具係にピンク・パウダー・パフ
  (これもオネエってゆー意味)を舞台セットに落とされたりする。冒頭の死に化粧が暗に彼の
  性癖をほのめかしていたのか?

  いつもどおりのケン・ラッセルのどぎついような映像と演出・・・でも充分ヌレエフの魅力が
  堪能出来る作品です。この作品の中一度だけヌレエフがクラシックバレエのポーズを取るとこ
  ろがあります。「牧神の午後」一瞬のヌレエフの美しさ・・・。

  上の写真は本物のヴァレンチノ。彼の代表作品は「血と砂」「シーク」。彼の美男子ぶりは余りにも有名であった
  ため後に「シーク」なる言葉は美男の代名詞になったという逸話もあります。

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