「 怪物王子によせて」


かくも長き苦しみに        
朝な夕なに繋がれて
もはや足れりと思わずや?

いと無慈悲なる夜の神
なさけ心をかけたまえ

われは冥府を彷徨いて
ひとり異形となり果てぬ

心も魂(たま)も疲れ果て
噛む手の他に友もなく

雲の恵みか わが涙
しとどに落ちて流るるも
のどの渇きは癒されず

あくこともなく火と燃える
悲しきあこがれ 深き罪
苦しみ悶え 果てしなき
悩みの餌食となりはてぬ

情けこもりし 目で眺め
なぐさむ兄のありなしや?

まことの愛をいだきたる
愛しき兄はありなしや?

会えば別れる現世に
見離されたるこのわれら

わが住む家は奥津城ぞ
わがふす床はかなしみぞ

われらの悲しき宿命も
二人の命結びあい
とわに終わらせたまえかし。