夢・憧れ・浪漫。誰もがそっと心の中にしまい込んでいる宝物。
不思議な郷愁を掻き立てられるその作品は、本仁戻の新境地と言えましょう。

発行 芳文社 \590(Tax In)
1999. 8. 17.





  第一譚  マリアの涙ああああああああ    1998年 花音 2月号
  第二譚  マニ・ア・マノああああああ    1998年 花音 6月号
  第三譚  青の下着(ブルウのパンツ)    1998年 花音 10月号
  第四譚   夢歩く猫の恋人(上)あああ    1998年 花音 12月号
       夢歩く猫の恋人(中)あああ    1999年 花音 2月号  
        夢歩く猫の恋人(下)あああ      1999年 花音 6月号
       あとがき              書き下ろし
 

 ◆この一連の作品は、作家本仁戻が内包してきた、唯美的な核の部分なの
  だと思う。「怪物王子」も彼の作家の唯美的な部分ではあるのだがそれ
  は、核融合をおこし何回も形を変えながらたどり着いた対岸のような気
  がする。しかし「探偵青猫」は核融合をおこす前の、そうまっさらな部
  分のような気がするのである。

 ◆極力トーンの使用を押さえた事により、画面からは、得も言われぬ色気が漂う。
  黒と白のコントラストの妙。まさに絶妙なバランスが保たれているのだ。他の作品
  に感じられる、シャープな線を排した事により、線はどこまでも官能的に感じる。         
  物語も登場人物も、実に魅力的である。きちんとお約束を踏んではいるが、本仁戻
  か描く探偵モノの王道なのである。誰もが一度は通って来たあの懐かしさを、漂わ
  せながらも、きちんと自分の言葉で語っているのは、流石である。

  この作品に、弱い部分を突かれ、またしても涙してしまった事は言うまでもない(笑)。


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