「戻が読者に許す範囲」

presentedby INOYAN sama



 

ボーイズラブ系コミックのマンネリ化に嫌気が差した時、
出会ったのが本仁戻の「恋が僕等を許す範囲」だった。

初めて手に取った時の違和感は、今でも良く覚えている。
その違和感とは、物語の中で「女性」が重要な役柄を得て登場してくる事や
登場人物達が極めて人間らしい事であった。
それに加えて、
「恋と愛」と言う難しいテーマを扱った漫画に1年前の私は、
衝撃を与えられた。
当時の私の中でのボーイズラブ系コミックのイメージは、
単なるポルノでしかなかった。
初めて目にした時は、今まで知らなかった世界に
ドキドキしながら読んでいたけれど
次第にそんな感情は冷めていく。
反対に、ストーリーの無さや
漫画その物の絵が目に飛び込んでくるようになり、
遂には

「なんやアダルトビデオと変わらんやん」

―っとこんな事まで思うようになっていった。
つまりその程度の範囲(可能性)しか持たないものであった。
なのに、私の手に取った一冊のコミックスは違っていた…

自分自身を愛し、
それ以上に人を愛してしまう事から生まれる嫉妬やエゴや思いやりの世界。
相手を思うが故に自分を傷つけ、
最愛の人をも傷つけてしまう行動やそれを
なかなか理解し合えないせつなさが、
読者を引き込み裏切るストーリー性がそこにはあった。
読んでいるうちに、違和感がどんどん消えて行ったのは言うまでも無い。

本仁 戻の作品は、多面性をふんだんに持った作品であり
常に読者の期待を裏切り、違う切り口で新しいものを提供してくれ、
業界やその消費者たる読者の持つ範囲を広げてくれる作家である。
まさに、

 「戻が読者に許す範囲」

はこの氾濫した業界に対して可能性を秘めたものではないだろうか。
 

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